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【短編小説】最後の願い

プロローグ

舞台はとある街の病院。会社員の渡(ワタリ)は、目が覚めると見知らぬ病院に身を横たえていた。医師からの突然の宣告。仕事一筋だった彼の、最後の願いとは。

本編

1章:宣告

 気が付いた時、僕は見知らぬ病院のベッドに身を横たえていた。腕には数本の管が機械と繋がっていて、呼吸はなんとかできているものの、いつもより息苦しく感じる。
 僕は仕事中に倒れて、救急車でこの病院まで運ばれてきたらしい。らしいというのは、倒れてから目が覚めるまでの記憶が全くないからである。担当医師から丸2日間も眠っていたことを教えてもらって驚いたけれど、続けて告げられた言葉に耳を疑った。

「渡さん、残念ですが、あなたの余命は残り2週間と思ってください」

 悲痛な表情をした医師から発せられた言葉に、僕は耳を疑った。職場で倒れた原因は、過度な睡眠不足とストレスを起因とする脳卒中と説明を受けた。けれど、併せて実施された精密検査の結果、僕の体はガンに侵されていると判明したのだ。ガンは身体中に転移していて、既に末期の状態だと。
 僕は脳卒中の障害で、右半身に軽度の麻痺が残った。それだけではなく、まさかガンまでも罹っていたとは・・・。

「身寄りの方はいますか?」

医師から声が掛かる。

「遠方に住む、両親だけです。」

僕がそう答えると、医師は病院から意識が戻ったことを両親に連絡すると言い残し、足早に病室を去っていった。

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